トランス脂肪酸とは?図を多用してわかりやすく解説します

トランス脂肪酸とは

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

今回は、世界的な共通認識として身体に悪いとされている「トランス脂肪酸」について、トランス脂肪酸とはどういったものなのかについて解説します。

上記のツイートのとおりでして、トランス脂肪酸が身体に悪いことを否定する専門家は見たことがありません。

では、トランス脂肪酸とはいったいどんな油なのか、よくわからない人もいると思います。

本記事ではそんな人に向けて、トランス脂肪酸とはいったいどんなものか、できるだけ図を多用してわかりやすく説明しています。

トランス脂肪酸とは?

トランス脂肪酸の分類(飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸)

トランス脂肪酸は、脂質の構成成分である脂肪酸の一種です。植物油などからマーガリンやショートニングなどを製造する際や植物油を高温にして脱臭する工程で生じます。また、天然でも、牛などの反すう動物に由来する乳製品や肉に含まれています。

引用:厚生労働省,トランス脂肪酸に関するQ&A

トランス脂肪酸はその名のとおり「脂肪酸の一種」です。

脂肪酸は脂質の種類の一つととらえてもらえればいいです。もう少し詳しくいえば、トランス型の構造をした脂肪酸のことをトランス脂肪酸といいます。

トランス型とシス型

トランス脂肪酸の原料は植物油で、マーガリンやショートニングを製造する過程や、植物油を高温で処理した際に、トランス脂肪酸がつくられます。

専門的にいえば、トランス脂肪酸とは「トランス型」の「二重結合」をもっている「不飽和脂肪酸」のことです。

要点をまとめると下記の通りになりますが、これだけだとよくわからないと思いますので、順を追って解説していきます。

トランス脂肪酸とは

  1. トランス脂肪酸は脂肪酸の一種
  2. 脂肪酸とは、食べ物の大部分を占める中性脂肪の構成要素の一つ
  3. 脂肪酸は炭素の二重結合(C=C)の有無によって以下の2つに分類
    ① 飽和脂肪酸
    ② 不飽和脂肪酸
  4. 不飽和脂肪酸のうち、トランス型の構造をもつものをトランス脂肪酸

トランス脂肪酸は脂肪酸の一種

中性脂肪の構造

中性脂肪(≒トリグリセリド)の構造

まず、トランス脂肪酸は「脂肪酸の一種」となります。

脂肪酸とは、油脂(≒中性脂肪)を構成する要素の一つです(上の図は中性脂肪の構造です)。なお、脂質にはいろんな種類がありますが、食べ物に含まれている脂質の大部分を占めているのは中性脂肪です。

脂肪酸と脂質の種類については、それぞれ下記の記事でわかりやすく解説していますので興味のある方はぜひご覧ください。

脂肪酸の構造脂肪酸の構造と種類についてわかりやすく解説します  脂質とは?脂質の種類脂質とは?その種類をとくに重要な5つにしぼって紹介します    

トランス脂肪酸とはある特定の構造(トランス形)をもった「脂肪酸」のことです。

脂肪酸について

脂肪酸の分類

脂肪酸の分類

  • パターン①:飽和脂肪酸 or 不飽和脂肪酸
    (脂肪酸の中に二重結合があるかないか)
  • パターン②:短鎖脂肪酸 or 中鎖脂肪酸 or 長鎖脂肪酸
    (炭素の鎖の長さ)

脂肪酸とは中性脂肪の構成要素であり、この脂肪酸の分類法のしかたには、上記の2パターンがあります。

トランス脂肪酸とは、ある特定の構造(トランス型)をもった不飽和脂肪酸のことです。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸について

不飽和脂肪酸の構造

 

引用一部改変:筋肉大全

上の図は、不飽和脂肪酸の一種であるオレイン酸の構造です。

構造式の中央辺りに、炭素の二重結合(C=C)があることがわかるかと思いますが、この炭素の二重結合の構造の有無によって脂肪酸は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。

  1. 飽和脂肪酸
    (炭化水素基に二重結合なし)
  2. 不飽和脂肪酸
    (炭化水素基に二重結合あり)

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のイメージ

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い

引用:SORA EPA+DHA800mg

  • 飽和脂肪酸
    → 固体の脂
    (肉の脂やバターなど動物性のものに多い)
  • 不飽和脂肪酸
    → 液体の油
    (サラダ油、ごま油、オリーブオイルなど植物性のものに多い)

上の写真をみてもらうとわかりやすいんですが、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のイメージはこんな感じだと思います。

飽和脂肪酸は肉やバターなど動物性のものに多く、常温で固体。一方の不飽和脂肪酸は植物の油に多く、常温で液体のことが多いです。

ただし、飽和脂肪酸にも植物性であるココナッツオイル(常温(25℃以上)で液体)があり、不飽和脂肪酸にも動物性である魚油などの例外があるので注意してください。

話しを元に戻すと、脂肪酸は炭化水素基に二重結合があるかどうかによって「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」とに分類されます。

肝心のトランス脂肪酸は不飽和脂肪酸です。

シス型とトランス型の脂肪酸

不飽和脂肪酸は、二重結合(C=C)をしてる炭素(C)と結合してる水素(H)の結合のしかたに違いがあり、トランス型をもっていれば、トランス脂肪酸と呼ばれます。

通常、私たちの体内にある不飽和脂肪酸は「シス型」の構造です。

トランス脂肪酸とは?【ある特定の構造をもった不飽和脂肪酸】

トランス脂肪酸の分類(飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸)

トランス脂肪酸とは脂肪酸の一種です。
この脂肪酸は炭素の二重結合(C=C)の有無によって飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類することができます。

このうち、トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸に分類されます。

そして、不飽和脂肪酸のうち、二重結合(C=C)をしてる炭素(C)と結合してる水素(H)の結合のしかたで、トランス型をもっていれば、トランス脂肪酸ということになります。

トランス型のシス型の構造の違い

 

  • トランス型
    → 
    炭素の二重結合を挟んで、水素が互い違い
    (→トランスには、”横切って、とか”かなたに”という意味があります。)
  • シス型
    → 
    炭素の二重結合を挟んで、水素の向きが同じ
    (→シスには、”同じ側の、とか”こちら側に”という意味があります。)

上の図は、「トランス型」と「シス型」の構造の違いを示しています。

図のように、二重結合(C=C)している炭素(C)と結合してる水素(H)の結合のしかたに違いがあることがわかると思います。

不飽和脂肪酸には、炭素と炭素の間に二重結合(C=C)が必ずあります。

トランスとは、”横切って、とか”かなたに”という意味があり、脂肪酸の場合では水素(H)が炭素(C)の二重結合を挟んでそれぞれ反対側についていることを意味しています。

シスとは、”同じ側の、とか”こちら側に”という意味があり、脂肪酸の場合では水素(H)が炭素(C)の二重結合を挟んで同じ側についていることを意味しています。

ちなみに、自然界にある不飽和脂肪酸のほとんどは、シス型で存在しています。
私たちの体内にある不飽和脂肪酸のほとんどもシス型です。つまり、トランス型の脂肪酸はイレギュラーなものということになります。

トランス脂肪酸の人体への影響

  1. 心臓病のリスクを上げる1)2)
  2. 悪玉コレステロールを増やす3)
  3. 糖尿病のリスクを上げる4)
  4. 記憶力が低下する5)
  5. うつ病やアルツハイマー病のリスクを上げる
  6. アレルギー疾患を増加させる

トランス脂肪酸の人体への影響を軽く調べただけでも上記のものがあります。

マーガリンなどはバターを使えばいいとして、ショートニングなどが含まれている菓子パンなどもできるだけ食べないに越したことはありません。

あと、昔の話ですがマクドナルドのポテトフライにはトランス脂肪酸が多く含まれているのは有名ですね。Mサイズのポテトには3~4gと、結構な量のトランス脂肪酸が含まれていたようですが、現在では企業努力もあって、トランス脂肪酸の量はかなり減っているとのことです。

トランス脂肪酸が含まれる食品

トランス脂肪酸は、脂質の構成成分である脂肪酸の一種です。植物油などからマーガリンやショートニングなどを製造する際や植物油を高温にして脱臭する工程で生じます。また、天然でも、牛などの反すう動物に由来する乳製品や肉に含まれています。

引用:厚生労働省,トランス脂肪酸に関するQ&A

トランス脂肪酸がどういった食品に含まれているのかを紹介します。

なお、トランス脂肪酸には、天然由来のものと人工由来のものがあります。

実は、2018年には米国では、トランス脂肪酸がほぼ全面使用禁止になっています。

一方の日本はというと、業界での自主規制はありますが、国からの規制というのは一切ないという状況です。

天然由来のトランス脂肪酸

自然界にある不飽和脂肪酸は、基本的に「シス型」です。

しかし、牛や羊などの反芻動物では微生物の働きによってトランス脂肪酸がつくられます。

そのため、牛肉、羊肉、牛乳などには微量のトランス脂肪酸が含まれています。

ただ、牛肉などに含まれている自然のトランス脂肪酸は、複数の研究で動脈硬化や心筋梗塞などのリスクを高めることはないってことが示されています。

私たちの身体にとって害となるのは「人工的に合成されたトランス脂肪酸」です。

人工由来のトランス脂肪酸

  • パターン①:油脂の加工・精製由来
    ・水素添加 → マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド
    ・精製 → サラダ油、キャノーラ油など
  • パターン②:調理する過程で発生
    ・揚げ物など

※ ただし、家庭で調理する油の加熱温度(160~180℃)ではほとんどトランス脂肪酸は生成しません。

人工由来のトランス脂肪酸としては、主に2パターンあります。

トランス脂肪酸が含まれる食品の代表格は「マーガリン」「ショートニング」「ファットスプレッド」です。

その他、安価なサラダ油やキャノーラ油といった植物油の精製過程でもトランス脂肪酸はつくられています。

サラダ油の作り方サラダ油の作り方を知ればどれだけ危険な油かがわかる!

マーガリンは植物油です。本来であれば常温で液体である植物油なんですが、加工技術である「水素添加」というものを施すことでつくられています。

部分水素添加とは

水素添加とは、不飽和脂肪酸にある炭素(C)と炭素(C)の二重結合に、部分的に水素(H)を添加することで、二重結合を炭素(C)の単結合にすることです。

要するに、水素添加とは液体の植物に水素をどんどん打ち込んでいって、固形化させることです。

これにより、液体の油を固体の脂(マーガリンなど)にすることができます。

この水素添加の過程で、不飽和脂肪酸のシス型の二重結合の一部がトランス型の二重結合になり、副産物としてトランス脂肪酸がつくられてしまいます。

ですので、マーガリンなどにはトランス脂肪酸が多く含まれています。ただ、トランス脂肪酸の害が知れ渡っているので、国内のメーカーでは、トランス脂肪酸の含有量をマーガリンが発売されています。

マーガリンの原料である植物油は、通常は液状です。しかし、水素添加することでバターのような固形の脂にすることができます。
マーガリンなどは植物油に部分水素添加がおこなわれてつくられています。部分というのは、完全に水素添加をおこなってしまうと、カチカチの脂ができてしまって、食品としておいしくなくなってしまいます。ですので、部分的に水素添加がおこなわれています。しかし、完全に水素添加した場合には現れなかった副産物として、部分水素添加では副産物としてトランス脂肪酸が生成されてしまいます。

天然由来と人工由来のトランス脂肪酸が含まれる食品

天然由来牛肉、牛乳、バターなど
人工由来水素添加
→マーガリン、ショートニング、ファットスプレッドなど
→上記を材料にした、洋菓子、スナック菓子、生クリーム、コーヒーフレッシュなど
油脂の精製過程
→サラダ油、キャノーラ油などの安価な植物油
→上記を材料にした、マヨネーズ、フライドポテト、フライドチキン、レトルト食品など
高温調理
→サラダ油などで高温調理した場合
→揚げ物(フライドポテト、フライドチキン)など

食品包装に書かれている成分表示でいうと、「マーガリン」「ショートニング」「ファットスプレッド」「食用植物油」「加工油脂」と書かれていれば、トランス脂肪酸が含まれています

  1. マーガリン
  2. ショートニング
  3. ファットスプレッド
  4. 食用植物油
  5. 加工油脂

そして、たいていのお菓子にはこれらの成分が含まれていて、サクサクとした食感を出すためなんかに使われています。

トランス脂肪酸の含有量

トランス脂肪酸の含有量(100gあたり)

  1. ショートニング:31g
  2. マーガリン:13g
  3. ファットスプレッド:10g
  4. 牛脂:2.7g
  5. バター:2.2g
  6. チーズ:1.5g
  7. サーロイン牛肉:1.4g

食品に含まれるトランス脂肪酸の含有量を比較すると、上記のようになります。

トランス脂肪酸には天然由来のものと人工由来のものがありますが、ショートニングやマーガリンなどの人工由来のもののほうが圧倒的に多くトランス脂肪酸が含まれています。

ですので、マーガリンやショートニングに関しては要注意です。市販の菓子パンを買うときにはトランス脂肪酸のことを思い出してください。

自然由来のものに関しては、トランス脂肪酸の含有量は微量ですので、これを気にするかどうかというのは微妙な問題ですが、個人的には無視してもいいのかなと思います。

スーパーの天ぷらやサラダ油のトランス含有量は?

理論的には、不飽和脂肪酸を高熱で加熱する過程やサラダ油を高熱で処理する過程でトランス脂肪酸が発生します。

しかし、実際にどの程度のトランス脂肪酸が含まれているのか、調べているユーチューバーがいましたので紹介します。

それによると、トランス脂肪酸の含有量は以下のとおりです。

  • 天ぷら:トランス脂肪酸の含有量 0.16g(100gあたり)
  • サラダ油:トランス脂肪酸の含有量 0.53g(100gあたり)

上記のとおり、トランス脂肪酸の含有量は微量ですので、トランス脂肪酸に関してはそこまで気にする必要はないのかも。

世界的にはトランス脂肪酸は危険な油として認識

マーガリン

トランス脂肪酸は欧米の大半の国で「毒」として使用が厳しく規制が設けられています。

しかし、マーガリンやショートニングが発売された当初は健康にいい脂として世間に広まりました。

現在ではトランス脂肪酸は別名で「食べるプラスチック」と呼ばれています。

マーガリンやショートニングは最初は健康にいいといわれていた!?

マーガリンやショートニングが世の中に出回り始めた当初は、心疾患と動物性の飽和脂肪酸の関係が問題となっていました。

1960年代に、アンセル・キーズ博士によって「飽和脂肪酸やコレステロールは、冠動脈性心疾患の原因になる」とする説が発表されました。
この説が主流となり、飽和脂肪酸やコレステロールは動物性の脂肪に多く含まれていますが、「動物性の脂肪=身体に悪い」というイメージが世間の中に浸透していきました。

つまり、動物性の脂をたくさんとっていれば心臓疾患が増えるという風に、世間の人々は考えていました。

そんな時代背景があった中、飽和脂肪酸やコレステロールが多く含まれている「バター」に変わるものとして、植物油を原料とした「トランス脂肪酸」が登場しました。

このトランス脂肪酸の特徴として以下のものがあります。

  1. 飽和脂肪酸の含有量が少ない
  2. バターに比べて安価
  3. コレステロールを含まない
    (コレステロールは動物性の脂肪に多く含まれています)
  4. 日持ちがよい

つまり、動物性の脂は身体に悪いという世間の風潮と相まって、健康に良く(飽和脂肪酸が少ない+コレステロールが含まれていない)、日持ちがよくて使い勝手の良いマーガリンやショートニングが一気に世間に広がっていきました。

トランス脂肪酸の現在の世界的流れ

トランス脂肪酸は欧米の大半の国で「毒」として使用が厳しく規制が設けられています。

ちなみに、アメリカでは2018年6月から食品へのトランス脂肪酸の使用規制(原則禁止)がされています。

2019年に入ると、タイやシンガポールのアジアでもトランス脂肪酸の使用が禁止となっています。

世界保健機関(WHO)は、トランス脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギーの1%未満(ちなみに、一般的な日本人でいうと2g未満)にするようにすすめています。

にもかかわらず、日本では日本人の通常の食生活では健康による被害は少ないだろうということで、2020年12月現在、トランス脂肪酸に関する規制は何もありません(ただし、表示義務はあり)

理由としては、日本人は欧米人に比べて、トランス脂肪酸の摂取量が少ないから、まぁ大丈夫でしょ、ってな感じです。

しかし、トランス脂肪酸の危険性はすでに世界的にすでに認められていまして、多くの国で規制がされています。おそらく今後、日本でも危険な油として使用が制限される可能性は大いにあります。

まとめ:トランス脂肪酸とは

トランス脂肪酸の分類(飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸)

トランス脂肪酸とは脂肪酸の一種です。

脂肪酸とは、中性脂肪を構成する要素の一つで、この脂肪酸は炭素の二重結合(C=C)の有無によって飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類することができます。

そして、不飽和脂肪酸のうち、二重結合(C=C)をしてる炭素(C)と結合してる水素(H)の結合のしかたで、トランス型をもっていれば、トランス脂肪酸ということになります。

トランス脂肪酸とは

  1. トランス脂肪酸は脂肪酸の一種
  2. 脂肪酸とは、食べ物の大部分を占める中性脂肪の構成要素の一つ
  3. 脂肪酸は炭素の二重結合(C=C)の有無によって以下の2つに分類
    ① 飽和脂肪酸
    ② 不飽和脂肪酸
  4. 不飽和脂肪酸のうち、トランス型の構造をもつものをトランス脂肪酸

まとめますと、トランス脂肪酸とは脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸に分類されるもので、トランス型の構造をもつ脂肪酸のことです。

 

 

というわけで今回は以上です。

トランス脂肪酸とはいったいなんなのかが少しでもわかってもらうことができたなら幸いです。

 

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