【透析装置の警報】静脈圧とは?【上昇と低下の原因】

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

透析中にもっとも多くなる警報といえば静脈圧だと思います。

そこで本記事では、静脈圧の上昇と低下の原因についてまとめたいと思います。

透析装置の静脈圧とは

静脈圧は、静脈チャンバーから出た圧ラインにより測定され、静脈チャンバーから静脈側アクセス部までの回路内圧の抵抗を監視しています。

引用:そこが知りたい 透析ケアQ&A-透析現場からの質問116- p17

静脈圧モニタは、静脈チャンバ部で回路内圧を監視することにより主に静脈チャンバ以降の回路内凝固やバスキュラーアクセスでの返血圧の変化をモニタリングしている。

引用:臨床工学技士のための血液浄化療法フルスペック p207

静脈圧については上記のとおりです。

ようするに、静脈圧とは透析回路から患者さんへ血液を返すときに、どれくらい返しやすいかの指標です。

静脈圧の基準値

静脈圧の基準値なんてものはありません。
(静脈圧は、血流量や穿刺血管の状態、穿刺針の太さに左右されます)

過去のその患者さんの経過と比べてどうなのかということが大切です。

ただ、理想的には血流量が200ml/minで静脈圧は100mmHg以下が望ましいといわれています。
最大でも180mmHg程度と考えられています。

あるいは、一般的に、200mmHg以下に管理しているという施設もあると思います。とはいえ、その患者さんの透析ごとに静脈圧と比較して判断することがやはり重要です。

静脈圧が高いのはよくない?

自己血管内シャント(AVF)では、本来動脈から毛細血管をとおって静脈へいく経路を、ショートカットして、動脈から直接静脈へ直接血液を流しています。

静脈からしてみれば、これまでの人類が経験したこともないほどの高い圧力です。

もし、透析での静脈側留置針から高い圧力の血液が噴き出していれば、それは静脈にとって強いストレスとなります。その結果、静脈の内膜が肥厚し、これにより静脈内腔が狭窄するということが考えられます。

静脈圧と再循環

 静脈側穿刺針に入った血液が、再び動脈側穿刺針から脱血されてくる状態が再循環(re-circulation)です。同じ血液が血液回路内を循環するので、その分全身の血液は浄化されません。静脈圧が高いと、静脈側穿刺針に入った血液が心臓に向かって戻りにくいため、再循環が起こる可能性があります。

引用:急変なし長生き元気の血液透析の実際―透析文化支援システムの構築を目指して

静脈圧が高いと、静脈針を出た血液が心臓に戻りにくいため、再循環が起こりやすいです。

高度に再循環が起こっている場合、同じ血液が除水され続けるために血液が濃縮されて、透析中に徐々に静脈圧が上がってきたりします。

ただ、静脈圧が高いからといって必ずしも再循環が起こりやすいかというとそんなことはなく、動脈側穿刺針と静脈側穿刺針の位置関係、シャント血管の狭窄部位など、その他の点にも気を配る必要があります。

透析中の静脈圧上昇の原因

静脈圧上昇の原因

  1. 静脈チャンバー内の凝固
  2. 静脈チャンバー下部の回路の折れ・ねじれ
  3. 返血側針の位置や方向
  4. 返血側針の凝固
  5. 血流量の上昇
  6. 返血側穿刺部位より中枢に狭窄がある

静脈圧上昇の原因は上記のとおりです。

透析回路の静脈チャンバー内の凝固

抗凝固剤の量が不足していることが主な原因として多いです。

ただし、ナファモスタットメシル酸塩を使用しているときは、回路内で血液が凝固しやすいため要注意です。

静脈圧が上昇してきて怪しいなと思ったら、生理食塩水を回路内に流して血液を薄めて、チャンバー内の状態を確認しましょう。

酷い場合には静脈側回路の交換が必要になります。

透析回路の静脈チャンバー下部の回路の折れ・ねじれ

回路が折れていたり、ねじれている場合は、折れ・ねじれを直しましょう。

返血側針の位置や方向

針先が血管の壁や静脈弁にあたっていたりすることがあるので、針先の位置・方向を調整しましょう(針先を少し引いたりするとよくなることが多いです)

少し腕を曲げただけで警報が鳴るようであれば、針先の位置を調整したり、回路の固定の向き変えましょう。

いつもなら静脈圧がそこまで高くないのに、今日だけ高い!針先の洗浄も調整もしたし、静脈側チャンバにも凝固がないしどうしてだろう・・・、みたいなときは、素直に刺し直しましょう。返血側なので、血液を返せればどこの静脈でもいいです。足の静脈でも返血は可能です。

返血側針の凝固

返血側針の針先が血栓で詰まっている場合があります。シリンジを使って血栓を吸引除去しましょう。

血流量の上昇

血流量が高ければ、当然静脈圧も上がります。

透析中の静脈圧低下の原因

静脈圧低下の原因

  1. 動脈側チャンバー内の凝固
  2. ダイアライザーの凝固
  3. 脱血不良
  4. 静脈チャンバー入口までの回路の折れ・ねじれ
  5. 血圧低下
  6. 返血側針の抜針、脱落
  7. 血液流量の低下

静脈圧低下の原因は上記のとおりです。

透析回路の動脈側チャンバー内の凝固

抗凝固剤の量が不足していることが主な原因として多いです。

生理食塩水を回路内に流して血液を薄めて、動脈側チャンバー内の状態を確認しましょう。
酷い場合は動脈側回路の交換が必要になります。

ダイアライザー内の凝固

抗凝固剤の量が不足していることが主な原因として多いです。しかし、膜の材質があっていない可能性もありますので、場合によっては、ダイアライザーの膜の種類を変更する必要があります。

生理食塩水を回路内に流して血液を薄めて、ダイアライザー内の状態を確認しましょう。
酷い場合は回路の交換が必要になります。

脱血不良

脱血不良であれば、脱血側の針先の位置を調整しましょう。
場合によっては再穿刺が必要です。

透析ごとに脱血不良があれば、血管不全の問題も考えられます。例えば、脱血側穿刺部位よりも吻合部側に狭窄があれる場合、脱血不良が起こる可能性があります。

静脈チャンバー入口までの回路の折れ・ねじれ

回路が折れていたり、ねじれている場合は、折れ・ねじれを直しましょう。

血圧低下

血圧低下は循環不全を意味しており、留置針のある血管の血流も低下しています。当然、脱血不良となり、静脈圧も低下します。

返血側針の抜針、脱落

返血側針が抜針し、脱落してしまっても静脈圧は下がります。このとき、静脈圧下限警報が発生すればポンプが停止するので、すぐに気づいて対応することができます。

しかし、返血側針が抜針しても警報が発生しないこともあります。この場合、大量出血して生命の危険につながりかねません。

一瞬の体動で静脈圧下限警報が発生した場合、ほんとうに体動によるものなのか、あるいは抜針が起こっているのか、しっかりよく観察して判断しましょう。

血液流量の低下

血液流量を低下させれば当然静脈圧も下がります。

 

というわけで今回は以上です。

【DCS-100NX】透析の静脈圧警報について【自動設定警報・固定警報・フルレンジ警報】

 

<注意事項> 本ブログに掲載されている情報の正確性については万全を期しておりますが、掲載された情報に基づく判断については利用者の責任のもとに行うこととし、本ブログの管理人は一切責任を負わないものとします。 本ブログは、予告なしに内容が変わる(変更・削除等)ことがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA