こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
本記事では、ATPとはいったいなんなのか?ATPの構造や役割についてもわかりやすくまとめました。
目次
ATPとは何?【アデノシン三リン酸】
ATPとは、すべての植物・動物・微生物の細胞のなかに存在しているエネルギーが蓄えられている物質のことです。
そんなATPの何がすごいのかというと、エネルギーを必要とするありとあらゆる状況で、エネルギーとして使われているところです。
- 身体を動かす
- 心臓を動かす
- 筋肉を動かす
- 胃や腸を動かす
- 呼吸をする
- 代謝をおこなう
上記のとおり、私たちが生きていくうえで必要なエネルギーは、ATP(アデノシン三リン酸)から得ています。
それくらい生命のエネルギー源として非常に重要な物質です。
私たちが食事をする理由は、このATPをつくるためです
- 私たちは食べ物からエネルギーを得ています。栄養学的にいえば、栄養素を消化、吸収、そして代謝することによってATPという物質をつくり、ATPを分解することによってエネルギーを得ています。
ATP(アデノシン三リン酸)という物質は、私たちが生きていくために必要な、エネルギーを蓄えている物質のことです。
こんな言い方をすると、「ATPがエネルギー物質として重要なことはわかったんだけど、食べ物もエネルギーになってるでしょ。だから、最悪、ATPが足りなくても食べ物からエネルギーを取り出せばいいんじゃないの?それに、ATP以外にもなにか似たような物質があるんじゃないの?」
こういう風に思う人もいるかもしれませんが、これは大きな間違いです。
たしかに、食べ物のなかにもエネルギーが蓄えられていて、そこから私たちはエネルギーを得ています。しかし、残念ながら食べ物をそのままの形からエネルギーとして使うことができません。
私たち生物は、いったん『食べ物→ATP』という変換をしてからでないと、エネルギーを利用することができません。
言い換えれば、私たちはATPを作るために食事をしているわけです。
じゃあ、ATP以外にもATPの代わりになるような物質があるのかというと、たしかにありますが、ほとんどの場合、ATPが使われています。
ATPをなにかに例えるとしたら「PASMO」や「Suica」のようなものです
ATPをなにか他のものに例えるとしたら、電車に乗るために使うプリペイドカードの『PASMO』や『Suica』がイメージしやすいと思います。
このカードに現金をチャージしておけばいくらでも電車に乗ることができます。
しかし、現金がいくらあってもカードがなければ電車に乗ることはできません。
必ず現金を、プリペイドカードの「PASMO」や「Suica」にチャージしてからでないと改札をとおることはできません。
ATPもこれとほぼ同じようなものです。
食べ物をいったんATPという形にしておかないと、わたしたちはエネルギーとして利用することができません。
- 現金 → 「PASMO」や「Suica」にチャージ → 電車に乗れる
- 食べ物 → 「ATP」に変換 → 生命活動のエネルギーに使える
ようするに、私たちをはじめとする植物・動物・微生物は、食べ物をATPという形に一旦変換しないと使えないということです。
それくらい、ATPに蓄えられているエネルギーというのは、細胞にとって使い勝手のいいエネルギーの形をしているということです。
コンビニに行って、100円のジュースを買うのに1万円札を出すとなんだか気持ち悪いですよね。
それと同じことような感じで、ATPは生命にとって使いやすい形のエネルギーをしています。
こういった理由から、ATPは別名『エネルギーの通貨』とも呼ばれています。
ATPをつくるための3つのシステム
- 解糖系
- クエン酸回路
- 電子伝達系
そんな重要なATPをつくるためのシステムは限られていて「解糖系」「クエン酸回路」「電子伝達系」のみです。
ですので、これら代謝経路が止まるというのは、すなわち「死」を意味します。
例えば酸素の供給が途絶えれば、電子伝達系の反応が止まるので死んでしまいます。
ATPの構造【アデノシン三リン酸】
- 構成要素①:リボース
- 構成要素②:アデニン
- 構成要素③:リン酸
ATPは上記の3つで構成されています。
では、それぞれについて個別にみていきます。
ATPの構成要素①:リボース
リボースは炭水化物です。
もう少し具体的にいうと、五単糖(炭素を5個もっている単糖のこと)です。
ちなみに、炭素Cを6つもっている六単糖の有名な炭水化物として、グルコース(C6(H2O)6)があります。
炭水化物とはいったいなんなのか?については下記の記事で詳しく解説しています。
炭水化物とは?【糖質と食物繊維の違い・種類を解説】ATPの構成要素②:アデニン
アデニンは、プリン塩基の1つです。
ATPの構成要素③:リン酸
リン酸は、いろんなところで使われている大切な化合物です。
例えば、細胞膜の材料になったり、遺伝情報が入ってるDNAに使われてたりしています。
アデノシン(リボース+アデニン)の構造
五単糖のリボースと、プリン体の一種のアデニンがくっついた物質のことを、アデノシンといいます。
ATP(アデノシン+リン酸×3)の構造
さらにアデノシンに、3つのリン酸をくっつければATP(アデノシン三リン酸)の完成です。
ATPの正式名称は「アデノシン三リン酸」です。
名前からわかるとおり、アデノシンに、3つのリン酸がくっついた化合物です。
ATPの分子量
- C10H16N5O13P3
=12×10+1×16+14×5+16×13+31×3
=507
※ 原子量はC=12、H=1、N=14、O=16、P=31です。
ATPの化学式は「C10H16N5O13P3」ですので、それぞれの元素の原子量を足し合わせたATPの分子量は507となります。
ATPの分子量は507ですので、ATPが1molあたり507gということです。
上記反応式のように、1molのATPからリン酸が一つ外れることによって、7.3kcalのエネルギーが発生します。
ですので、507gのATPには7.3kcalのエネルギーが含まれているということがわかります。
ATPの役割
ほぼすべての細胞が機能するためにはATPによるエネルギーが必要です。
ATPがないと細胞は生き残ることができず、死んでしまいます。
私たちの身体は一個一個の細胞によってできているので、すなわち私たちにとっても『死』を意味します。
つまり、細胞がATPをつくることは私たち自身にとっての生命線だということです。
なお、ATPはエネルギー源としてではなく、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の材料としても使われています。
ATPからエネルギーが放出されるときの化学式
上記反応式のように、ATPからリン酸が外れることによってエネルギーが発生します。
この発生するエネルギー(7.3kcal)が、生命の維持に使われています。
そしてATPは、以下のような場面で利用されています。
- 基礎代謝と新陳代謝
- 筋肉を動かす、呼吸をする、心臓を動かす、体温を維持する
- 脳の活動
- 細胞内へのイオンや栄養物質の取り込み
- ホルモンや酵素の分泌
- などなど・・・
ATPの貯蔵
元来、ATPの貯蔵はできません。
ただし、微量のATPは細胞内にわずかですが存在しています。
ATPの材料
- 糖質
- 脂質
- タンパク質
ATP(アデノシン三リン酸)をつくっている場所は細胞内で、そのうちのほとんどは、ミトコンドリア内(95%以上)でつくられています。
そして、ATP(アデノシン三リン酸)の主な材料は、三大栄養素の「糖質」「脂質」「たんぱく質」です。
このうち、とくに「糖質」と「脂質」が主にATPをつくるための材料として使われています。
まとめ:ATPとは?
ATPとは、すべての植物・動物・微生物の細胞のなかに存在しているエネルギーが蓄えられている物質のことです。
このATPに蓄えられているエネルギーは、ATPがADPとリン酸に分解されるときに放出されます。
ちなみに、ATP以外の物質としては、GTP、GDP、UTP、CTPなどがあります。
しかし、ほとんどはATPがエネルギー源として使われています。
そして、私たちが食事をする意味としては、ATPをつくることです。
たしかに、食べ物のなかにもエネルギーが蓄えられていて、そこから私たちはエネルギーを得ています。しかし、残念ながら食べ物をそのままの形からエネルギーとして使うことができません。
私たち生物は、いったん『食べ物→ATP』という変換をしてからでないと、エネルギーを利用することができません。
- 身体を動かす
- 心臓を動かす
- 筋肉を動かす
- 胃や腸を動かす
- 呼吸をする
- 代謝をおこなう
上記のとおり、私たちが生きていくうえで必要なエネルギーは、ATPから得ています。
それくらい生命のエネルギー源として非常に重要な物質です。
というわけで、ATPについては今回は以上です。
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