【2016年版透析液水質基準】透析液の水質基準についてわかりやすく解説

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

本記事は、日本透析医学会の「2016年版透析液水質基準」と「透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準 2008」、日本臨床工学技士会の「2016年版透析液水質基準達成のための手順書 Ver 1.01」を参考に執筆しております。

透析液の水質基準

  1. 生物学的汚染物質(エンドトキシン、生菌)
  2. 化学的汚染物質

「2016年版透析液水質基準」で定められている水質基準は上記の2つです。

生物学的汚染基準(エンドトキシン、生菌)の到達点

生菌数エンドトキシン濃度
透析用水100 CFU/ml未満0.050 EU/ml未満
標準透析液100 CFU/ml未満0.050 EU/ml未満
超純粋透析液0.1 CFU/ml未満0.001 EU/ml未満
(測定感度未満)
透析液由来オンライン調整透析液
(オンライン補充液)
無菌かつ無発熱物質(無エンドトキシン)

参考:2016年版 透析液水質基準

用語の解説
※ 透析用水
・透析用作製装置の出口水で、多人数用透析液供給装置、個人用透析装置などに供給される水
※ 標準透析液
・血液透析を行う場合の最低限の水質
※ 超純粋透析液
・オンライン補充液を作製する透析液
・逆濾過透析液を積極的に用いる透析装置(全自動透析装置など)
・プッシュアンドプルHDF透析装置
・内部濾過促進型透析(内部濾過量35 ml/min以上)
・基本的にすべての血液透析療法に推奨される
※オンライン補充液
・オンラインHDF/HF

オンライン血液透析濾過(透析液の一部を取り出して、血液回路の中に直接注入するオンライン血液透析濾過)をおこなうためには、承認された血液浄化装置を用い、HDFフィルターを使用し、定められた水質基準を満たすことが必須条件です。

オンライン血液透析での生物学的汚染の水質基準に関して詳しくいえば、最終的に血液回路の中に注入される透析液は、オンライン補充液の基準(無菌かつ無発熱物質(無エンドトキシン))を担保する必要があります。

しかし、生菌数、エンドトキシンともに実際には測定不可能です。そのため、下記に示すとおり、超純粋透析液の水質を満たすことを確認した後に、ETRFを通すことで、理論的なバリデーションを得ています。

現在の超純粋透析液の定義(ET測定感度未満、細菌 0.1CFU/mL未満)はオンラインHDFにおける持続的補充液作製において、滅菌相当であるET測定感度未満、細菌数10-6CFU/mL未満を担保するために最終ETRFの直前透析液に必要とされた概念的水質基準であり17)、オンラインHDFやプッシュプルHDFを行う場合に使用される。

引用:透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準 2008 p162

細菌10-6CFU/mLは滅菌相当を意味し、10-6CFU/mL未満を実測するためには1t以上の補充液を検査する必要があるため、この値はバリデーションにより達成される理論的な数値である。Ledeboら19)は最終濾過膜前の透析液を超純粋透析液(0.1CFU/mL)と規定し、滅菌最終ETRFのLRVが細菌7、ETは4であるから10-8CFU/mLの清浄度が得られ、突発的に100倍(102)の汚染が起こっても10-6CFU/mLのレベルが得られるとの理論的根拠を示した。

引用:透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準 2008 p162

CFUとは?

CFU/mLという単位は、1mLの試料に何個のコロニーをつくる細胞が含まれているかを示す単位です。

生物学的汚染物質(エンドトキシン、生菌)の測定方法

測定法法
エンドトキシンリムルス試験法、または同等の感度を有すると証明されたものを用いる。
生菌R2AとTGEA寒天平板培地を基本とする。培養条件は、R2AとTGEAを用いる場合、17~23℃、7日間。

生物学的汚染物質(エンドトキシン、生菌)の採取部位

採取部位
透析用水透析用水作製装置の出口後
透析液透析器入口
オンライン補充液補充液抽出部位

オンラインHDF/HF装置は単一故障時にも水質が維持できるように2本のETRF(医療機器の部分品)が直列に装着されている。1本目のETRF(装置入口側)の透析液が標準透析液を担保していればETRFのET、細菌阻止性能(LRV値)より2本目のETRF前(1本目出口)は超純粋透析液(生菌数 0.1CFU/ml未満、ET 0.001EU/ml未満(測定感度未満))となり、オンライン補充液は「2016年版透析液水質基準」に記載されている通り、超純粋透析液から製造されることになる(製造業者担保)。またオンライン補充液抽出部位(無菌かつ無発熱物質(無エンドトキシン))の記載は、サンプルを行った透析液のETが測定感度未満で、且つ生菌数がNDでなければ適合していないと判断する。生菌数が1CFU/100mLではオンライン補充液に適合しないと判断するべきである。

引用:2016年版透析液水質基準達成のための手順書 ver 1.01、p10

生物学的汚染物質(エンドトキシン、生菌)の測定頻度

測定頻度
透析用水3ヵ月ごと(基準値を遵守している場合)。基準を満たしていない場合は1カ月ごと。
標準透析液毎月。少なくとも末端透析装置1基以上が試験され、各装置が少なくとも年1回試験されるように装置を順番に測定する。
超純粋透析液透析装置製造業者によってバリデーションされた機器を使用する場合には、その使用基準に従う。さらにオンライン補充液を作製する透析液では、エンドトキシン、生菌はシステムが安定するまでは2週間ごと。透析機器安全管理委員会によってシステムが安定されたと判断された後は、毎月少なくとも末端透析装置1基以上が試験され各装置が少なくとも年1回試験されるように装置を順番に測定する。
オンライン補充液透析装置製造業者によってバリデーションされた機器を使用し、その管理基準に従わなければならない。さらにオンライン補充液を作製する透析液は超純粋透析液基準に従う。
エンドトキシンオンライン補充液はシステムが安定するまでは2週間ごと。透析器安全管理委員会によってシステムが安定されたと判断された後は毎月少なくとも末端透析装置のオンライン補充液が1基以上試験され各装置が少なくとも年1回試験されるように装置を順番に測定する。
生菌10-6測定は不可能である。

 

 

というわけで今回は以上です。

透析液の残留塩素濃度については下記の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

2016年版 透析液水質基準の総残留塩素濃度についてわかりやすく解説

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