透析患者の水分制限【1日に摂取してもいい水分量はどれくらい?】

こんにちは、臨床工学技士の秋元です

上記のツイートのとおり、患者さんから1日にどれくらい水分をとってもいいのか?というのはよく聞かれます。

そこで本記事では、上記のツイートを深掘りしつつ透析患者さんの1日に摂取してもいい水分量について解説しています。

透析患者さんの水分制限の基準

引用:日本腎臓学会.慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版.東京,東京医学社,2014

日本腎臓学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」によりますと「透析患者の水分摂取量はできるだけ少なく」とされています。

明確に、〇〇mL以下に水分は制限すべき、みたいな基準はありませんが、実際の臨床の現場では患者さんから「どのくらい水分を制限すればいいの?」というのは、よく聞かれることが多いです。

ちなみに、2007年版の慢性腎臓病に対する食事療法基準では、透析期の腎不全患者差の1日水分摂取許容量は「できるだけ少なく」という前提のもとで、15mL/kgDW/日以下とされていました。

DWが60kgの患者さんでは60kg×15mL=900mL/日となります。

この文言は同基準の2014年版では削除され、水分に関しては「水分はできるだけ少なく」という文言のみになりました。

参考

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透析患者さんが1日に摂取してもいい水分制限の目安【計算方法】

一般的に、透析間の体重増加は、中1日でDWの3%、中2日でDWの5%(または6%)程度に収めることが望ましいとされています。

例えばDWが60kgの透析患者さんの場合、中1日で1.8kg、中2日で3.0kgとなります。

ですので、1日あたりの体重増加量で換算すると、0.9~1.0kgになります。

そして、無尿の透析患者さんの場合、1日の体重増加量に影響を与える因子として、以下のものがあります。

体に入る水分量体から出る水分量
・食事に含まれる水分※1
(1,000mL/day)
・代謝水※2
(300mL/day)
・飲水量
(???mL/day)
・不感蒸泄※3+汗
(900mL/day)
・便中水分
(100mL/day)
※1 食事量が多いと含まれる水分量も多くなります。
※2 体内で食べものが代謝された時にできる水分です。
※3 呼気と皮膚から蒸散する水分です(汗は含みません)

1日の体重増加量を実際に計算してみると・・・

  • 食事に含まれる水分(1,000mL)+代謝水(300mL)+飲水量(???mL)
    ー 不感蒸泄,汗(900mL)- 便中水分(100mL)
この計算結果が無尿の透析患者さんの体重増加となります。

DWが60kgの透析患者さんの1日あたりの体重増加量の許容値は900g~1,000gですので、上記の計算式より、この範囲内の体重増加に抑えるために許される1日の飲水量は600~700mLとなります。

中2日でもっとも生命予後が良いのは4%以内の体重増加?

引用:日本透析医学会:維持血液透析ガイドライン:血液透析処方,透析会誌

日本透析医学会(JSDT)では、中2日での透析間体重増加量をDWの6%未満とすることを推奨しています。

また、日本透析医学会による透析調査による「わが国の慢性透析療法の現況」において、中2日で1年後に生きる確率がもっとも高い透析間の体重増加は、DWの4~6%でした。

しかし、6年後に生きる確率がもっとも高い透析間の体重増加率はDWの2~4%でした。

これはおそらく、透析間の体重増加率が多ければ、その分、透析1回あたりの除水量が多くなり、それが予後に影響していると思われます。ですので、予後を悪化させないためには、透析間の体重増加は、中2日で4%以下に収めるのが良いのかもしれません。

透析中の過度な除水速度と総除水量は、透析中の低血圧、透析後の起立性低血圧、心筋梗塞、脳梗塞、虚血性腸炎のリスクを高めますので、死亡のリスクを高めます。

透析患者さんの1日の体重増加量

体に入る水分量体から出る水分量
・食事に含まれる水分※1
(1,000mL/day)
・代謝水※2
(300mL/day)
・飲水量
(???mL/day)
・不感蒸泄※3+汗
(900mL/day)
・便中水分
(100mL/day)

まとめます。

上記の表のとおり、透析患者さんの1日の体重増加量は「体に入る水分量ー体から出る水分量」となります。

※1 食事量が多いと含まれる水分量も多くなります。
※2 体内で食べものが代謝された時にできる水分です。
※3 呼気と皮膚から蒸散する水分です(汗は含みません)

例えば、おしっこが全く出ていない人で、1日あたり600mlの水分をとった場合、

  • 食事に含まれる水分(1,000mL)+代謝水(300mL)+飲水量(600mL)
    ー 不感蒸泄+汗(900mL)ー 便中水分(100mL)
    = 体重増加量(900mL)

DWが60kgの透析患者さんの1日あたりの体重増加量の許容値は900g~1,000gですので、ピッタリこの範囲内に収まります。

つまり、DWが60kgの透析患者さんの1日の水分摂取量の目安は「600~700ml+尿量/日」くらいです。

このくらいの飲水であれば安全に透析がおこなえます。

ちなみに、無尿の透析患者さんでは、8.2gの食塩を摂取すると、喉が渇いて1Lの水を飲むので、理論的には1kgの体重増加となります。

まとめ:1日に必要な水分制限の量

透析患者さんのなかには、体重の増えが多くて体重管理の悪い患者さんもいます。

本人としては自覚がなくても、しっかりと体重が増えてくればなにかしらの原因があるはずです。

ポイントとしては、とにもかくにも塩分制限が大切です。

塩分を制限していれば飲水量も減りますので、水分制限が楽になります。

水分制限に関して、維持透析患者さんの1日の飲水量の目安は「DW60kgの人で尿量+600~700ml程度」であることを伝え、塩分制限がとくに重要だという認識をもってもらう必要があります。

 

というわけで今回は以上です。

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