こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。
本記事では、日機装の透析装置の心臓部ともいえる「複式ポンプの仕組み」と「除水精度に関わる密閉状態」について解説しようと思います。
目次
日機装の透析装置DCS100NXの複式ポンプの仕組み
画像引用:山下芳久編集,これで透析装置がよくわかる 透析装置および関連機器の原理(構造・機能)とメインテナンス
「複式ポンプ」には同じ容量の部屋が二つあり、新鮮な透析液を供給する一方で使用済みの透析液を排液しています。
複式ポンプの仕組み
画像引用:吉澤拓也,菅野有造,第Ⅱ章 透析装置 5.個人用透析装置
複式ポンプは、ダイアライザに供給する新鮮な透析液の量とダイアライザから排出する使用済排液の量を等量に送液する役割を担っており、左右同一形状のポンプヘッドにて、一つのモータでプランジャを駆動する容積形の往復動定量ポンプである。患者からの除水を高精度に行うためには、複式ポンプ両ヘッドの吐出量の差を少なくすることが重要である。
引用:枝村八郎、[展望・解説]人工透析(人工腎臓)におけるポンプ
それではもう少し具体的に解説します(上の図と併せてごらんください)。
複式ポンプの仕組みは、シリンダ(円筒)内にあるプランジャがモーターによって左右に往復運動させることによって透析液の給液と排液をおこなっています。
まず、複式ポンプの一方のシリンダ(A側)に充填された透析液は、プランジャにより押し出されてダイアライザに供給されます。これと同時に、もう片方のシリンダ(B側)には、ダイアライザからの透析液が吸引されます。
このA側とB側のシリンダ内は同じ容量ですので、ダイアライザに給液する透析液と、ダイアライザから排液する透析液は同じ量に制御されます。このようにして、ダイアライザに給液と排液される透析液の量を一定にして密閉状態をつくっています。
後述しますが、この密閉状態を維持することは、正確な除水をおこなうために非常に重要です。
このように、日機装の透析装置DCS-100NXは、複式ポンプを中心にして、透析液の給液側と排液側のポンプの機構を同一にすることで、ダイアライザに流入・流出する透析液量を等しくし、ダイアライザを含む透析液回路の密閉状態をつくっています。
複式ポンプによる密閉容量差制御方式による除水制御
画像引用:吉澤拓也,菅野有造,第Ⅱ章 透析装置 5.個人用透析装置
透析装置にとって肝となる除水制御は、閉鎖式容量制御方式によっておこなわれています。
この閉鎖式容量制御方式とは、ダイアライザを含む透析液回路を完全な密閉状態とし、ダイアライザに給液・排液する透析液量を等しくします。除水は、その閉鎖回路から除水ポンプで引っ張りだして除水をおこなっています。
除水ポンプの原理については下記の記事で解説しています。
【透析】日機装社製の除水ポンプの原理・仕組みにについて例えば、ダイアライザに給液する透析液流量が500mL/min、除水速度を10mL/minだとすると、ダイアライザの排液側では510mL/minの排液となります。つまり、除水ポンプによって10mL/minが除水され、残りの500mL/minは複式ポンプに戻ることになり、密閉系は維持されています。
密閉系が崩れると除水誤差になる
先ほどにも説明したように、日機装社製の透析装置は、ダイアライザを含む透析液回路を完全な密閉状態とし、ダイアライザに供給・排液する透析液量を等しくしています。除水は、その閉鎖回路から除水ポンプで引っ張りだして除水をおこなっています。
ダイアライザに給液する透析液流量が500mL/min、除水速度を10mL/minだとすると、ダイアライザの排液側では510mL/minの排液となります。つまり、除水ポンプによって10mL/minが除水され、残りの500mL/minは複式ポンプに戻るので、密閉状態は維持されています。
しかし、ダイアライザに供給・排液する透析液量のバランスが崩れてしまうと、密閉状態が維持されていないということになり、除水誤差になります。
すなわち、ダイアライザに給液されている透析液が500mL/minのときに、ダイアライザから排液される量が520mL/minであれば、バランスが崩れてしまっているという状態です。この場合、給液と排液の差分の20mL/minは患者さんから除水されてしまいます(つまり過除水となります)。
というわけで今回は日機装の透析装置の複式ポンプの仕組みについて解説しました。複式ポンプは透析装置の心臓部ともいえる非常に重要なポンプですので、しっかりと理解しておきましょう。
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