【透析】日機装社製の除水ポンプの原理・仕組みにについて

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

透析装置の除水ポンプはその名のとおり、患者さんの血液から余分な水分を除水するためのポンプです。

しかし、その原理や仕組みについてはっきりとわかっている人も少ないと思いますので、本記事では、日機装社製の除水ポンプの原理・仕組みについてわかりやすく解説したいと思います。

【透析】日機装社製の除水ポンプの原理・仕組みについて

除水ポンプ

除水ポンプ

日機装社製のコンソールに搭載されている除水ポンプの仕組みは、「プランジャ」と呼ばれるものが前後に動くことで除水をおこなっています

具体的には「プランジャ」が前後運動することによって、水分の吸入・吐出を繰り返しています。

ですので、「プランジャ」の回転数が上がると、除水量が増える仕組みとなっています。

すなわち、除水ポンプの速度を上げることが、除水量の設定というわけです。

このように除水ポンプの動作原理自体は非常にシンプルです。

ちなみに、除水ポンプには水分の流れが一方向になるように、ポンプ室の入口と出口には逆止弁がそなえつけられています。
さらに、除水ポンプの吐出精度を監視するためにポンプ室の入口と出口には電極がついています。

除水ポンプによる除水の仕組み

現在の透析において、透析液側に除水ポンプによって陰圧をかけることで強制的に圧力差を発生させ、血液から除水をおこなっています。

圧力差にしたがって、血液中の水分子が血液側から透析液側へと強制的に移動します。このとき、ダイアライザの膜孔を通過して移動するものは、水分子だけでなく、膜の穴よりも小さな小分子や中分子の物質も水分子とセットになって移動します。

除水制御機構は閉鎖式容量制御方式です

ただし、透析装置での除水は除水ポンプでただ陰圧を発生させて行っているだけではありません。

閉鎖式容量制御方式という方法で正確な除水制御をおこなっています。

閉鎖式容量制御方式とは?

閉鎖式容量制御方式とは何ぞや?という人のために簡単に説明したいと思います。

まず、閉鎖式とはダイアライザを含む、透析液側を完全な1つの密閉系と考えて、透析液の供給と排液のバランスを保っているということです(透析液のINとOUTを同じにしているということです)

そして、この密閉系の戻り口から(ダイアライザの透析液の戻り口から)、設定された除水量分だけ除水ポンプによって密閉系の外へと透析液をひっぱりだしています。
この、除水ポンプで引っ張り出した分が除水量となります。

これが、閉鎖式容量制御方式による除水の原理です。

ちなみに、除水制御方式には、開放式容量制御方式もありますが、国内メーカーはどこも閉鎖式容量制御方式を採用しています。

例:閉鎖式容量制御方式

出典:血液浄化療法 フルスペック p10

閉鎖式容量制御方式について、もう少し具体的に説明したいと思います。

例えば、除水速度を0.6L/hに設定したとします。
(1分間あたりでは、10ml/minの速度で除水されることになります。)

この場合、密閉系において透析液の流量を500ml/minに制御したとします。
(ダイアライザに流入・流出する透析液量が500ml/minに保たれています。)

この密閉系において、透析液のダイアライザの戻り口から除水ポンプによって強制的に10ml/minの速度で除水します。
そうすると、ダイアライザからは510ml/minの速度で透析液が流出することになります。

血液側で考えると、ダイアライザに流入する血液量が200ml/minだとすると、ダイアライザから流出する血液量は190ml/minに減っています。

こういった仕組みで、精度の高い除水をおこなっています。

密閉系のバランスが崩れると除水誤差の原因となる

除水ポンプ

除水ポンプ

除水は透析膜を介した限外濾過によっておこなわれています。そしてこの限外濾過は、排液側から除水ポンプによっておこなわれています。したがって、密閉系のバランスが崩れると、除水誤差の原因となります。

ちなみに、密閉系内に気泡が混入しても、給液・排液の流量誤差の原因となるため、脱気ポンプによって、液体中に溶存する気泡は除去されています。

 

というわけで今回は以上です。

できるだけわかりやすく除水ポンプの原理と、閉鎖式における除水の仕組みを説明しました。少しでも参考になれば幸いです。

 

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