腎臓では、赤血球をつくるためのホルモンであるエリスロポエチン(EPO)をつくっています。
このエリスロポエチン(EPO)の命令により、骨の中の骨髄で赤血球がつくられます。
しかし、腎臓がわるくなるとEPOの産生が低下するため貧血になってしまいます。
(その他にも理由はありますが・・・)
これがいわゆる腎性貧血です。
したがって、腎性貧血の治療はEPO欠乏状態が主な理由ですので、ESAの補充がおこなわれます。
ESA(赤血球造血刺激因子製剤)とは、腎臓からつくられる天然エリスロポエチン(165個のアミノ酸からなるペプチドホルモン)と類似の構造をもったペプチドです。骨髄の中の赤芽球系前駆細胞に働き、赤血球への分化と増殖を促して、貧血を改善します。
ようするに、腎性貧血の治療のメインは、ESA(赤血球造血刺激因子製剤)の投与だということです。
そして現在、わが国では5種類のESAが使用可能です。
透析患者に使用するエポエチンなどの種類
現在、わが国で使用可能なESA(赤血球造血刺激因子製剤)は、以下の6種類です。
一般名 | 商品名 | 投与間隔 |
---|---|---|
エポエチンアルファ 添付文書 | ・エスポ―注射液750シリンジ ・エスポ―注射液1500シリンジ ・エスポ―注射液3000シリンジ | 最大週3回 |
エポエチンカッパ (エポエチンアルファの後半品) 添付文書 | ・エポエチンアルファBS注750シリンジ「JCR」 ・エポエチンアルファBS注1500シリンジ「JCR」 ・エポエチンアルファBS注3000シリンジ「JCR」 | |
エポエチンベータ 添付文書 | ・エポジン注シリンジ1500 ・エポジン注シリンジ3000 | |
ダルベポエチンアルファ 添付文書 | ・ネスプ注射液40μgプラシリンジ ・ネスプ注射液60μgプラシリンジ ・ネスプ注射液120μgプラシリンジ | 週1回、もしくは2週に1回 |
ダルベポエチンアルファ(遺伝子組換え) (ネスプの後発品) 添付文書 | ・ダルベポエチン アルファ注40ugシリンジ「KKF」 ・ダルベポエチン アルファ注60ugシリンジ「KKF」 ・ダルベポエチン アルファ注120ugシリンジ「KKF」 | |
エポエチンベータペゴル 添付文書 | ・ミルセラ注シリンジ50μg ・ミルセラ注シリンジ100μg ・ミルセラ注シリンジ150μg | 月1回 |
上記のESAの主な違いは半減期です。
エスポ―、エポエチンアルファ、エポジンは半減期が短く(薬の効果が早くなくなる)ので、週2~3回投与する必要があります。
一方のネスプやミルセラは半減期が長いので、ネスプは週1回、ミルセラは月1回の投与で効果があります。
現在、透析患者の8割以上において、ESAは投与されています。
エスポ―とエポジンの違い(アルファとベータの違い)
「エスポ―」も「エポジン」も、1990年に透析中の腎性貧血の治療薬として承認されてから、ながらく、透析患者さんにつかわれている薬です。
エスポ―の有効成分はエポエチンアルファで、エポジンの有効成分はエポエチンベータです。両者の違いは、わずかな糖鎖の違いのみであり、効果にほぼ違いはありません。
ただし、まれにエスポ―とエポジンの切り替えに際し、ごくまれではありますが、皮膚などにアレルギー反応が現れる場合があります。
というわけで今回は以上です。