解糖系で必要な全10種類の酵素を図をつかって紹介します

解糖系とは、わかりやすく

こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。

本記事では、解糖系に必要な全10種類の酵素を紹介します。

下記の記事では、解糖系についてわかりやすく解説しています。

解糖系とは、わかりやすく解糖系とはなに?わかりやすく簡単に解説してみた

解糖系で必要な全10種類の酵素を紹介します

解糖系とは、わかりやすく

解糖はすべての哺乳類細胞のサイトゾルに存在する経路であり、グルコース(またはグリコーゲン)を代謝してピルビン酸と乳酸を生成する。

引用:清水孝雄[監修],イラストレイテッドハーパー・生化学,p202

解糖系でグルコースを代謝した場合、およそ10段階の反応をへて最終的にピルビン酸(もしくは乳酸)へとなります。この過程で私たち身体のエネルギーであるATPがつくられます。

この解糖系の反応過程では、それぞれ違った酵素が必要です。
(解糖系の全体の反応は上の図をごらんください)

そして、その解糖系に必要な酵素の種類は全部で10種類あります。

これら解糖系にある酵素は、原子の追加、除去、移動などの化学反応を効率的におこなうために必須となります。

以下が解糖系で必要な全10種類の酵素です。

  1. ヘキソキナーゼ
    (転移酵素)
  2. グルコース-6-リン酸イソメラーゼ
    (異性化酵素)
  3. ホスホフルクトキナーゼ
    (転移酵素)
  4. アルドラーゼ
    (除去付加酵素)
  5. トリオ―スリン酸イソメラーゼ
    (異性化酵素)
  6. グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素
    (酸化還元酵素)
  7. ホスホグリセリン酸キナーゼ
    (転移酵素)
  8. ホスホグリセリン酸ムターゼ
    (異性化酵素)
  9. エノラーゼ
    (除去付加酵素)
  10. ピルビン酸キナーゼ
    (転移酵素)
※ 転移酵素:転移酵素は、官能基を交換する反応を触媒します。
※ 異性化酵素:異性化酵素は、化合物中の原子のつながり方を変える反応を触媒します。
※ 除去付加酵素:除去付加酵素は、物質のある部分を除去したり、付加したりする反応を触媒します。
※ 酸化還元酵素:酸化還元酵素は、電子の授受のある反応を触媒します。

というわけで、これら酵素について、1つ1つ役割をみていきます。

1.ヘキソキナーゼ(転移酵素)

ヘキソキナーゼ(転移酵素)

細胞内に入ったグルコースは、ヘキソキナーゼ(転移酵素)によって、ATPに含まれるリン酸がグルコースに移され(これをリン酸化といいます)、グルコース-6-リン酸がつくられます。

ちなみに、上の図をみてもらうとわかりますが、この反応によってATPが消費されます。

※ リン酸化:リン酸をつけらることです。
※ 転移酵素:転移酵素は、官能基を交換する反応を触媒します。

2.グルコース-6-リン酸イソメラーゼ(異性化酵素)

グルコース-6-リン酸イソメラーゼ(異性化酵素)

グルコース-6-リン酸は、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ(異性化酵素)によって、原子の配置換えがおこなわれ、フルクトース-6-リン酸がつくられます。

※ 異性化酵素:異性化酵素は、化合物中の原子のつながり方を変える反応を触媒します。

3.ホスホフルクトキナーゼ(転移酵素)

ホスホフルクトキナーゼ(転移酵素)

フルクトース-6-リン酸は、ホスホフルクトキナーゼ(転移酵素)によって、ATPに含まれるリン酸がフルクトース-6-リン酸に移され(これをリン酸化といいます)、フルクトース1,6-ビスリン酸がつくられます。

ちなみに、上の図をみてもらうとわかりますが、この反応によってATPが消費されます。

※ リン酸化:リン酸をつけらることです。
※ 転移酵素:転移酵素は、官能基を交換する反応を触媒します。

4.アルドラーゼ(除去付加酵素)

アルドラーゼ(除去付加酵素)

フルクトース1,6-ビスリン酸は、アルドラーゼ(除去付加酵素)によって、フルクトース1,6-ビスリン酸は、ジヒドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデヒド3-リン酸に分割されます。

※ 除去付加酵素:除去付加酵素は、物質のある部分を除去したり、付加したりする反応を触媒します。

5.トリオ―スリン酸イソメラーゼ(異性化酵素)

トリオ―スリン酸イソメラーゼ(異性化酵素)

ジヒドロキシアセトンリン酸は、トリオ―スリン酸イソメラーゼ(異性化酵素)によって、ジヒドロキシアセトンリン酸の原子の配置換え(炭素原子から水素原子を引き離し、隣の炭素原子に置き換える)がおこなわれ、グリセルアルデヒド3-リン酸がつくられます。

※ 異性化酵素:異性化酵素は、化合物中の原子のつながり方を変える反応を触媒します。

6.グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(酸化還元酵素)

グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(酸化還元酵素)

※ ここまではATPを消費しながら代謝が進んできましたが、グリセルアルデヒド3-リン酸がエネルギー的にマックスですので、以降の代謝はエネルギーを放出しながら代謝が進んでいきます。

グリセルアルデヒド3-リン酸は、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(酸化還元酵素)によって、アルデヒド基の酸化とリン酸化がおこなわれ、1,3-ビスホスホグリセリン酸がつくられます。

アルデヒド基の酸化のときに取り除かれた水素は、NADへと移り、NADH+H+となります。

※ アルデヒド基:アルデヒドの特性をもつ官能基で、-CHOの化学式で表されます。
※ リン酸化:リン酸をつけらることです。

7.ホスホグリセリン酸キナーゼ(転移酵素)

ホスホグリセリン酸キナーゼ(転移酵素)

1,3-ビスホスホグリセリン酸は、ホスホグリセリン酸キナーゼ(転移酵素)によって、リン酸がADPに移され、ATPと3-ホスホグリセリン酸がつくられます。

この反応でATPがつくられます。

※転移酵素:転移酵素は、官能基を交換する反応を触媒します。

8.ホスホグリセリン酸ムターゼ(異性化酵素)

ホスホグリセリン酸ムターゼ(異性化酵素)

3-ホスホグリセリン酸は、ホスホグリセリン酸ムターゼ(異性化酵素)によって、3-ホスホグリセリン酸の配置換え(リン酸を端から中央へ移動する)がおこなわれ、2-ホスホグリセリン酸がつくられます。

※ 異性化酵素:異性化酵素は、化合物中の原子のつながり方を変える反応を触媒します。

9.エノラーゼ(除去付加酵素)

エノラーゼ(除去付加酵素)

2-ホスホグリセリン酸は、エノラーゼ(除去付加酵素)によって、脱水され(H2Oが除去され)、ホスホエノールピルビン酸がつくられます。

※ 除去付加酵素:除去付加酵素は、物質のある部分を除去したり、付加したりする反応を触媒します。

10.ピルビン酸キナーゼ(転移酵素)

ピルビン酸キナーゼ(転移酵素)

ホスホエノールピルビン酸は、ピルビン酸キナーゼ(転移酵素)によって、リン酸がADPに移され、ATPとピルビン酸がつくられます。

この反応でATPがつくられます。

※転移酵素:転移酵素は、官能基を交換する反応を触媒します。

解糖系の律速酵素

解糖系の律速酵素は以下の3つです。

  1. ヘキソキナーゼ
  2. ホスホフルクトキナーゼ
  3. ピルビン酸キナーゼ

これらの酵素はアロステリック調節を受ける酵素で、解糖系の速度調節で重要な役割を担っています。

※ 律速酵素とは、反応系において、その系全体の速さを調節するように働く酵素のことです。一般的に律速酵素は活性が低いです。
※ アロステリック調節とは、酵素にリガンドが結合することで、酵素の形が変化し、酵素活性が調節されることです。

まとめ:解糖系で必要な10種類の酵素

解糖系とは、わかりやすく

というわけで、解糖系で必要な10種類の酵素は以下のとおりです。

  1. ヘキソキナーゼ
    (転移酵素)(律速酵素)
  2. グルコース-6-リン酸イソメラーゼ
    (異性化酵素)
  3. ホスホフルクトキナーゼ
    (転移酵素)(律速酵素)
  4. アルドラーゼ
    (除去付加酵素)
  5. トリオ―スリン酸イソメラーゼ
    (異性化酵素)
  6. グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素
    (酸化還元酵素)
  7. ホスホグリセリン酸キナーゼ
    (転移酵素)
  8. ホスホグリセリン酸ムターゼ
    (異性化酵素)
  9. エノラーゼ
    (除去付加酵素)
  10. ピルビン酸キナーゼ
    (転移酵素)(律速酵素)
※ 転移酵素:転移酵素は、官能基を交換する反応を触媒します。
※ 異性化酵素:異性化酵素は、化合物中の原子のつながり方を変える反応を触媒します。
※ 除去付加酵素:除去付加酵素は、物質のある部分を除去したり、付加したりする反応を触媒します。
※ 酸化還元酵素:酸化還元酵素は、電子の授受のある反応を触媒します。

最終的につくられたピルビン酸はその後、嫌気的に乳酸へと代謝されるか、あるいは好気的にクエン酸回路と電子伝達系で代謝されて利用されます。

解糖系については、下記の記事でわかりやすく解説しています。

解糖系とは、わかりやすく解糖系とはなに?わかりやすく簡単に解説してみた

 

というわけで今回は以上です。

 

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2 COMMENTS

nao

ご指摘ありがとうございます。

すぐに修正したいところですが、原本の画像データが消えてしまったので修正に時間がかかってしまいます。

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