【乳酸脱水素酵素】LDHとは?その基準値もあわせてわかりやすく解説!

乳酸脱水素酵素(LDH)

こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。

本記事では、LDH(乳酸脱水素酵素)とはいったいなんなのか?そして、LDH(乳酸脱水素酵素)の基準値などについて、初心者でもわかるようにわかりやすく解説しています。

LDH(乳酸脱水素酵素)の基準値

LDH(乳酸脱水素酵素)の基準値は病院によってまちまちですが、日本臨床検査標準協議会JCCLSが、2014年に発表した「共用基準範囲」の基準値は124~222 U/Lとなります。

LDH(乳酸脱水素酵素)とは?

乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LDH)は解糖系からTCA回路に入る直前の代謝産物であるピルビン酸と乳酸の変換を触媒する酵素である。

引用:[改訂第3版]透析患者の検査値の読み方,p141

LDH(乳酸脱水素酵素)とは、解糖系の最終的な生成物であるピルビン酸を乳酸へと分解するために(もしくは乳酸からピルビン酸へと変換するときに)必要な酵素です。

つまり、細胞内でグルコースをエネルギーに変換するときに働く酵素です。ほとんどすべての細胞や臓器に含まれていますが、とくに腎臓、骨格筋、心筋、膵臓、肺、赤血球に多く含まれています。

LDH(乳酸脱水素酵素)は、さまざまな細胞や臓器に含まれているので、疾患特異性は低いです。しかし、少なくともどこかの細胞が壊れていて血中にLDH(乳酸脱水素酵素)が逸脱しているということはわかります。つまり、LDHとはいわゆる逸脱酵素です。
TCA回路とはクエン酸回路のことです。

LDH(乳酸脱水素酵素)の役割

反応全体の収支は、

  • パターン①:グルコース+2NAD++2ADP+2リン酸 → 2ピルビン+2NADH+H++2ATP+2H2O
  • パターン②:グルコース+2ADP+2リン酸 → 2乳酸+2ATP+2H2O

参考:公益社団法人 日本薬学会 「解糖系」

解糖系の反応には好気的条件下と嫌気的条件下で、上記の2パターンがあります。

パターン①好気的条件下(酸素が十分にある状態)の場合
→グルコースは最終的にピルビン酸にまで分解されます。
(1モルのグルコースから、2モルのビルピン酸、2モルのATP、そして2モルのNADH+H+がつくられます。)

パターン②嫌気的条件下の場合
→グルコースはピルビン酸に分解され(ここまでは好気的条件下と同じ)、そしてさらにピルビン酸は乳酸にまで分解されます。
1モルのグルコースから、2モル乳酸と2モルのATPがつくられるます。)

LDH(乳酸脱水素酵素)とは、解糖系でつくられたピルビン酸を、乳酸へと変換するとき(もしくは乳酸からピルビン酸へと変換するとき)に必要となる酵素です。

LDH(乳酸脱水素酵素)が触媒する反応

  • ピルビン酸 + NADH+H+ ⇔ 乳酸 + NAD+

乳酸は、激しい無酸素運動をおこなったときに、筋肉細胞内でブドウ糖がエネルギーとして代謝される際に、LDH(乳酸脱水素酵素)に触媒されて最終的につくられる物質です。

一般的には、乳酸は筋肉疲労の原因物質として知られています。そして体内に蓄積した乳酸は、血液を介して肝臓にまで運ばれて、LDH(乳酸脱水素酵素)により、ピルビン酸に戻されます。その後、糖新生によりブドウ糖へと再合成されて血中に放出、エネルギー源として使われます。

LDH(乳酸脱水素酵素)が多く含まれる組織

LDH(乳酸脱水素酵素)が多く含まれる細胞・臓器は以下のとおりです。

  • 骨格筋
  • 肝臓
  • 心臓
  • 膵臓
  • 脾臓
  • 赤血球
  • 悪性腫瘍

LDH(乳酸脱水素酵素)は、ほとんどすべての細胞・臓器に存在する酵素ですが、とくに骨格筋、肝臓、心臓、膵臓、脾臓、赤血球、悪性腫瘍に多く含まれています。

ですので、これらの臓器の損傷で細胞・臓器が破壊されると血液中に出てきて、血液中のLDH(乳酸脱水素酵素)値が上昇します。

LDH(乳酸脱水素酵素)は、細胞・臓器が破壊された場合に血液中に流出します。こういった酵素を「逸脱酵素」といいます。

しかし、ほぼすべての細胞・臓器に含まれるLDH(乳酸脱水素酵素)の増加だけでは、どの臓器の障害か判断することは難しいです。

LDH(乳酸脱水素酵素)が高いときに考えられる疾患

LDH(乳酸脱水素酵素)が高いときに考えられる疾患は以下のとおりです。

  • 肝疾患
    (急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌など)
  • 心疾患
    (急性心筋梗塞、心筋炎、心不全など)
  • 腎疾患
    (腎不全、ネフローゼ症候群、腎癌など)
  • 血液疾患
    (白血病、溶血性貧血、悪性リンパ腫など)
  • 肺癌、膵癌、肺梗塞、間質性肺炎
  • 筋ジストロフィー、横紋筋融解症
  • 妊娠後期
  • 激しい運動後
  • 喫煙

LDH(乳酸脱水素酵素)が高いときは、LDH(乳酸脱水素酵素)を含む細胞・臓器が障害を受けて壊れたために、血液中にLDH(乳酸脱水素酵素)が流れてていることを意味しています。

しかし、LDH(乳酸脱水素酵素)は、ほぼすべての細胞・臓器に存在するため、臓器特異性は低いです。
つまり、いろんな疾患で上昇するため、LDH(乳酸脱水素酵素)のみの高値だけで、どの組織の障害かを特定することはできません。

このためLDH(乳酸脱水素酵素)は、スクリーニング検査といって、いわゆる「ひっかけ検査」として利用されます。
まずは異常(LDH(乳酸脱水素酵素)の高値)を感知し、そのあとに他の血液検査項目や画像検査、症状などから障害部位を絞り込んでいきます。

例えば肝疾患であれば、ASTやALTも増加します。心筋や骨格筋の疾患であれば、CKやASTも増加します。

また、LDH(乳酸脱水素酵素)の半減期はおよそ数時間~3日です。ですので細胞・臓器の破壊が少なくなればLDH(乳酸脱水素酵素)は数日以内に減少に転じます。逆に細胞・臓器の破壊が亢進している場合には上昇あるいは高値が持続することになります。

これは病態の経過を判断する場合に参考となります。

例えば心筋梗塞の場合、発症後6~10時間で上昇しはじめ、24~60時間後にピークとなったあとは減少し、6~15日で基準範囲にまで戻るとされています。

LDH(乳酸脱水素酵素)の値と疾患のおおよその目安

LDH(乳酸脱水素酵素)
U/L
判定 疾患
120以下 低値 正常者でもみられるため、経過観察
120~442 正常
442~500 軽度上昇 慢性肝炎、肝硬変、腎炎、筋障害、軽い心筋梗塞など
500以上 中・高度上昇 心筋梗塞、溶血、悪性腫瘍、白血病、悪性貧血など

LDH(乳酸脱水素酵素)の値と疾患のおおよその目安を上の表にまとめました。

ただし、LDH(乳酸脱水素酵素)が高いというだけで疾患を特定することはせず、他の血液検査項目や画像検査、症状などから総合的に判断します。

例えば、LDHアイソザイムのパターンやASTとの比(LDH/AST)により障害部位をある程度まで推定することができます。

LDHとASTの比(LDH/AST)

LDH/AST 疾患・病態
5以下 急性肝炎、肝癌
5前後 心筋梗塞
5~15 慢性筋疾患
10~20 前立腺癌、間質性肺炎、ウイルス感染症
15以上 白血病、悪性リンパ腫、肺癌、胃癌
20~80 溶血性貧血

LDH(乳酸脱水素酵素)が高いとき、どの細胞・臓器の障害に由来するものかを考える際に、まず注目するのがASTです。

LDHとASTの比(LDH/AST)をみることで、障害されている組織をある程度推測することができます。

LDH以外の項目もみる

例えば、ALTが正常であれば、LDH(乳酸脱水素酵素)の上昇は肝臓由来でないことがわかります。

また、CKが基準値内であれば、LDH(乳酸脱水素酵素)上昇の原因として、心筋細胞障害、もしくは骨格筋細胞障害は否定的となります。

LDHアイソザイムのパターン

LDHはアミノ酸組成の異なるM鎖(muscle)とH鎖(heart)の2種類のサブユニットからなる四量体で分子量は約140,000である。電気泳動法ではサブユニットの組み合わせにより、五つのアイソザイムに分画される。異常値を示した場合、アイソザイムの分析や他の酵素との関係により由来臓器を推測できる。

LDH(乳酸脱水素酵素)には5種類のアイソザイム(LDH1~5)があります。

それぞれのアイソザイムによって多く含まれる細胞・臓器が異なります。したがって、どの病気によって上昇するアイソザイムが違います。

通常の採血で検査しているLDH(乳酸脱水素酵素)ではこれらのアイソザイムの総量を測定しています。

LDHアイソザイムの基準値

LDHアイソザイムの基準値は以下のとおりです。

  • LDH1:20~31%
  • LDH2:29~37%
  • LDH3:22~28%
  • LDH4:6~12%
  • LDH5:5~13%

参考:[改訂第3版]透析患者の検査値の読み方,p141

LDHアイソザイムのパターン

LDH1とLDH2増加 溶血性貧血、悪性貧血、心筋梗塞など
LDH2とLDH3が増加 白血病、膠原病、肺癌、悪性リンパ腫、進行癌、膵炎、筋ジストロフィー、など
LDH4とLDH5が増加 肝炎、肝癌、前立腺癌、多発性筋炎、骨格筋の損傷、うっ血性心不全など

LDH(乳酸脱水素酵素)が低いときに考えられること

臨床的に、LDH(乳酸脱水素酵素)が低くて問題になることはほぼありません。

原因としては、ピットフォール失活因子、遺伝性LD-Hサブユニット欠損などがあります。

まとめ:LDH(乳酸脱水素酵素)とは?その基準値はいくつ?

LDH(乳酸脱水素酵素)とは、解糖系の最終的な生成物であるピルビン酸を乳酸へと分解するために(もしくは乳酸からピルビン酸へと変換するときに)必要な酵素です。

臨床的には、LDH(乳酸脱水素酵素)が高値のときは、LDH(乳酸脱水素酵素)を含む細胞・臓器が障害を受けて壊れたために、血液中にLDH(乳酸脱水素酵素)が流れてていることを意味しています。

しかし、LDH(乳酸脱水素酵素)は、ほぼすべての細胞・臓器に存在するため、臓器特異性は低いです。
つまり、いろんな疾患で上昇するため、LDH(乳酸脱水素酵素)のみの高値だけで、どの組織の障害かを特定することはできません。

このためLDH(乳酸脱水素酵素)は、スクリーニング検査といって、いわゆる「ひっかけ検査」として利用されます。
まずは異常(LDH(乳酸脱水素酵素)の高値)を感知し、そのあとに他の血液検査項目や画像検査、症状などから障害部位を絞り込んでいきます。

 

というわけで今回は以上です。

 

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