こんにちは、臨床工学技士のナキです。
TMP(膜間圧力差)は、血液側圧の平均と透析液側圧の平均の差を指し、膜負荷の指標として使います。
- 4点法:TMP = {(Pi + Po)/2} − {(Di + Do)/2} + πc
- 3点法:TMP = {(Pi + Po)/2} − {Do}
- 2点法:TMP = {Po} − {Do}
※Pi=血液側入口圧, Po=血液側出口圧, Di=透析液入口圧, Do=透析液出口圧, πc=コロイド浸透圧
TMP(膜間圧力差)は、各社メーカによって、計算方法や補正の方法が異なっています。ですので、相対値として日常管理の目安にはなりますが、真値ではないので、絶対値で評価する際には注意が必要です。
目次
TMP(膜間圧力差)の計算方法
TMP(膜間圧力差)は膜に対する負荷をあらわしているので、膜に加わっている圧力の大小を評価することができます。
TMP(膜間圧力差)の定義は、血液側入口圧、血液側出口圧の平均と、透析液側入口圧、透析液側出口圧の平均の差と、コロイド浸透圧によって、上記の式により計算されます※1。
※1 参考:生体機能代行装置学血液浄化、東京:東京電機大学出版局
つまり、中空糸内を流れる圧力の平均と、中空糸の周囲を流れる透析液圧の平均の差分がTMP(膜間圧力差)ということです。
4点法でのTMPの計算
3点法でのTMPの計算
2点法でのTMPの計算
ほとんどのコンソールでは、TMPは静脈圧と透析液出口圧の差分で計算されています。
これでは正確なTMPの測定ははっきりいって難しいです。ですので、普段の値と比べてTMPが高い値になっていないかどうかの監視が重要です。
2点法は過小評価しやすいので注意
2点法だけでTMPを見ると、実際より低く見えてしまうことがあります。とくにHDFでは「安全そうに見えるのに、実は膜には強い負荷がかかっていた」というズレが起きやすいです。
Ficheuxらは、血液側入口(Bi)・出口(Bo)と透析液側出口(Do)を連続的に記録して、2点法(Bo−Do)3点法(Bi・Bo・Doから算出)
を比べました。
すると同じ条件でも、3点法のTMPが2点法の“最大3倍”になる場面があり、2点法では300mmHg以下に見えていても、Bi圧はメーカーの安全上限(600mmHg)を超えるケースがありました。著者らは「HDFで2点法を使うのは危険がある」と注意喚起しています。
“This study draws our attention to the dangers of using a two-pressure points TMP calculation, particularly when performing HCV-HDF.” PubMed
4点/3点/2点の比較表
方法 | 必要圧力 | 長所 | 弱点 | 向く場面 |
---|---|---|---|---|
4点法 | Pi,Po,Di,Do,πc | 理論に忠実で精度高い | 測定点が多い | HDFの精密監視 |
3点法 | Pi,Po,Do | 変化に敏感 | 透析液入口圧を省略 | 一般的なHDF/HD |
2点法 | Po,Do | 実装が簡単 | 過小評価・変化乏しい | 日常の相対監視 |
まとめ
TMP(膜間圧力差)の計算方法は、全部で3種類あります。
このうち、もっとも精度が高いといわれているのが、4点法での計算方法です。
2点法でのTMPの計算は、治療中最も変化する「血液側入口圧」を考慮していません。
そのため、TMP(膜間圧力差)に注意すべき治療であるオンラインHDFなどでは、「血液側入口圧」を加えた3点法か4点法での計算のほうが望ましいです。
というわけで今回は以上です。
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