輸血用の血液製剤「RBC」が凝固しない理由

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

本記事では、輸血用の血液製剤「RBC」がなぜ凝固しないのか、その理由を解説しています。

輸血用の血液製剤「RBC」が凝固しない理由

輸血用の血液製剤のRBCには保存液として、CPD(Citrate,Phosphate,Dextrose)が加えられています。

CPD液には、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ブドウ糖、リン酸二水素ナトリウムが含まれています。

日本では、血液200mLに対して加えられる CPD液は28 mLです。

このCPD液に含まれるクエン酸イオンが、血液凝固因子である血液中のカルシウムと化学的にしっかりと結合することで、血液の凝固を防いでいます。

血液が凝固するときには、血液凝固因子と呼ばれる13種類の物質による凝固カスケードがおこなわれるが、カルシウムはこの血液凝固因子の1つです。なお、凝固カスケードではリン脂質とカルシウムイオンが不可欠な段階があります。

つまり、保存液中のクエン酸ナトリウムによって輸血用の血液製剤のRBCが凝固しないというわけです。

ちなみに、CPD液に含まれているリン酸二水素ナトリウムは緩衝液として、ブドウ糖は赤血球のエネルギー源としての役割があります。

血液の凝固を抑える方法がなかった時代の輸血【クエン酸による血液凝固予防の発見】

1915年以前の輸血は、血液をもらう人と、血液を提供する人を並べて、急いで腕から腕へと血液を輸血する方式(arm-to-arm)が一般的でした。

なぜなら、血液は放っておけば数分で凝固するからです。こういった理由があり、当時は満足な輸血量を確保することが困難でした。

しかし、アメリカ・ニューヨークの病院に勤務する生理学者のリチャード・ルーイソンは、「血液の凝固を止めれば、急いで輸血する必要はないのではないか?」という発想を思いつきました。そこでルーイソンが目を付けたのが「クエン酸ナトリウム」です。当時すでに血液検査では使われていましたが、クエン酸ナトリウムには毒性があるので、人体に使うのはタブーとされていました。しかし、ルーイソンは「薄めれば使えるのではないか」と考え、4年に及ぶ実験の末(患者に危害を及ぼさない濃度の研究し)、1915年に、血液を凝固させず、毒性も出ない抗凝固剤(クエン酸ナトリウム)をつくることに成功しました。

厳密にいえば、1914~1915年に、独立した四つのグループから相次いで、血液凝固に必須であるカルシウムイオンのキレート作用があるクエン酸ナトリウムが、輸血用の血液の抗凝固剤として利用できると報告しています。

参考:一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 , 輸血の歴史

このルーイソンがつくりだした抗凝固剤であるクエン酸ナトリウムを基本としたものが現在でもつかわれています。

参考:テルモ株式会社 医療の挑戦者たち11 血液の保存

 

というわけで、今回は輸血用の血液製剤『RBC』がなぜ凝固しないのか、その理由を解説してみました。

輸血用の血液製剤の種類については下記の記事で解説していますので興味のある人はぜひご覧ください。

輸血の種類についてわかりやすく【血液製剤:RBC、PC、FFP】

 

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