こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
本記事では、透析で使われる抗凝固薬の種類と特徴をまとめています。
目次
血液透析で使われる抗凝固薬の種類
- 未分画ヘパリン
- 低分子量ヘパリン
- ナファモスタットメシル酸塩
- アルガトロバン
日本で血液透析時の抗凝固薬として認可されている薬剤は、上記の4種類です。
未分画ヘパリン
ヘパリンはアンチトロンビン-Ⅲ(AT-Ⅲ)と結合することで、その活性を1,000~4,000倍に高める。ヘパリン-AT-Ⅲ複合体はトロンビンのほかにもXaをはじめⅨa、Ⅺa、Ⅻaを抑制する。
引用:若手医師のための透析診療のコツ,p121
ヘパリン(未分画ヘパリン)はアンチトロンビンⅢ(ATⅢ)と結合して複合体を形成して、抗凝固作用を発揮します。
- トロンビン(第Ⅱa因子)
- 第Xa因子
- 第Ⅸa因子
- 第Ⅺa因子
- 第Ⅻa因子
ヘパリン-アンチトロンビンⅢ複合体は、上記の血液凝固因子であるトロンビン(Ⅱa)、Xa、Ⅹa、Ⅸa、Ⅺa、Ⅻaを阻害することで抗凝固作用を発揮します。
特に、トロンビン(Ⅱa)と第Xa因子の作用を抑制することで抗凝固作用を発揮します。
ヘパリンについて詳しくは下記の記事をご覧ください。
ヘパリンの作用機序をわかりやすくまとめてみた低分子量ヘパリン
低分子ヘパリンは、主にAT-Ⅲと結合して、凝固因子の第Xa因子の活性を阻害することで、抗凝固作用を発揮しています。
作用機序は未分画ヘパリンと同じですが、低分子化されたことによって、未分画ヘパリンの抗凝固作用(Ⅱa、Xa抑制作用)のうち、Xa抑制作用のみ残し、Ⅱa(トロンビン)抑制作用はほとんどなくなっています。
低分子ヘパリンについて詳しく知りたい人は下記の記事をご覧ください。
透析のときに使う低分子ヘパリンの種類【商品名も紹介】ナファモスタットメシル酸塩
ナファモスタットメシル酸塩(nafamostatmesilate;NM)は、蛋白分解酵素阻害薬であり、抗凝固作用としてはトロンビンをはじめとする血液凝固因子を多段階で抑制し、血小板凝集能も抑制する。
ナファモスタットメシル酸塩(フサン®)は、タンパク分解酵素阻害薬です。
血液凝固は一連の酵素反応であるので、ナファモスタットメシル酸塩(フサン®)ははこれら凝固系の酵素の反応を阻害して、抗凝固作用を発揮します(詳細は後述します)。特に透析においては、出血病変をもっていたり、出血リスクの高い患者さんに対して、透析中の抗凝固薬としては第一選択薬です。
ナファモスタットメシル酸塩の作用機序
- トロンビン
- カリクレイン
- プラスミン
- トリプシン
- ホスホリパーゼA2
ナファモスタットメシル酸塩の主な阻害酵素は上の5つです。
特に抗凝固作用という点において重要なのは「トロンビン」「Ⅻa因子」「Ⅹa因子」の作用の阻害です。
- トロンビン
- Ⅻa因子
- Ⅹa因子
ナファモスタットメシル酸塩について詳しく知りたい人は下記の記事をご覧ください。
透析のときに使うナファモスタットメシル酸塩(フサン®)についてまとめてみたアルガトロバン
アルガトロバンは、合成抗トロンビン(抗Ⅱa)薬です。
その作用機序は、アンチトロンビンⅢ(AT-Ⅲ)を介さずに単独でⅡa(トロンビン)に結合して酵素活性を阻害します。
アルガトロバンの特徴
- 分子量:526Da
- 半減期:約30分
- Ⅱa(トロンビン)抑制作用はAT-Ⅲを介さないため、AT-Ⅲ欠乏症でも抗凝固効果あり
- 透析性はなし
- Ⅱa(トロンビン)の作用を強力に抑制するため、出血性合併症に注意が必要
アルガトロバンの特徴をまとめると上記のようになります。
というわけで、血液透析で使用する4種類の抗凝固薬の概要についてまとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。